蒼青堂

斜め45度のカルチャーマガジン

【広島原爆の日】『ヒロシマはどう記録されたか』(朝日文庫) 書評/記者達が残した被爆当日の広島の記録

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文章:蒼崎青太郎(twitter:@seitaro_aozaki)

1945年8月6日の午前8時15分。マリアナ諸島のテニアン島から飛び立ったB–29”エノラ・ゲイ”より投下されたウラン型原子爆弾リトルボーイは、横向きにスピンしながら落下していき、投下目標であったT字型の相生橋のやや東南に位置していた島病院の上空600メートルで炸裂しました。

炸裂した原子爆弾の閃光と衝撃波(マッハステム)は建築物のほとんどを一瞬にして破壊し尽くし、ありとあらゆる生命を焼き尽くしました。

その広島への原爆投下の日から74年の歳月が経ちます。

僕はこれまで数多くの原爆に関する本を読んで来ましたが、中でも原爆を語る上で絶対に外せないと思う一冊があります。

それは『ヒロシマはどう記録されたか』というタイトルの一冊です。今回はその本を紹介します。

後世に必ず残すべき被爆当日の貴重な記録

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本書は2003年にNHK出版より刊行された『ヒロシマはどう記録されたか~NHKと中国新聞の原爆報道』を加筆修正し、朝日新聞出版より2014年7月に上下巻で文庫化されたものです。

1945年8月6日に広島に投下された原子爆弾で被爆したものの、一命をとりとめた広島中央放送局、中国新聞社の記者たちの被爆体験や、その時の広島の惨状をどのようにして記録していったのかを記したものになります 。

その記者たちの被爆体験を読んでいると、想像の中ではありますが、あのキノコ雲の下で起きていた地獄絵図が脳裏に浮かんできます。

廃墟と化した広島の街で、腕から皮膚が垂れ下がった状態で逃れる被爆者の群れや熱線で大火傷を負った人々。そこらじゅうに転がっているという黒焦げになった死体や、川一面に浮かぶおびただしい死体・・・

しかし、僕には想像することしか出来ません。僕が想像する以上の地獄であったに違いありません。

そんな地獄と化した広島の様子を記録に残そうと、カメラに収めた記者たちがいました。被爆当日の広島の写真は5枚しか残っていないと言います。その5枚の中でも特に、投下から約3時間後に松重美人カメラマンが撮影した御幸橋での2枚の写真が印象に残リます。その写真に写っているのは、救護を待つ被爆者の群れや、火傷に油を塗ってもらっている人、黒焦げの赤ちゃんを抱えた母親(写真でははっきりとは分かりませんが、証言でそのように記述されています)の姿など。非常に有名な写真なので、小中学校の平和学習などで目にした方も多い一枚だと思います。その写真の撮影時の周囲の状況を読んでいて言葉などは出て来ず、胸が張り裂けそうな思いでした。あまりにも酷い。

被爆者達の被爆体験などを記した本は数多くありますが、ここまで刻銘に被爆状況をどう記録していったのかが記されている本を僕は他に知りません。

自らも被爆していたにも関わらず、原爆投下直後の廃墟と化した広島の街を走り周り、少しでも記録を残そうとした記者の方々の思いを考えると胸が締め付けられるような気持ちになります。あの日、こうして記録を残してくれたからこそ、被爆当日の広島の凄惨な状況を嘘なく語り継いでいけるのです。

また、本書は戦後どのようにして原爆報道がなされていったのか、被爆者たちはどのようにして生きていったのかということも記されています。

本書は原爆を語る上で間違いなく外せない一冊であると同時に、必ず後世に残していくべき一冊であると思います。一人でも多くの方に読んで頂けることを心から願っています。

ヒロシマはどう記録されたか 上 昭和二十年八月六日 (朝日文庫)

ヒロシマはどう記録されたか 上 昭和二十年八月六日 (朝日文庫)

ヒロシマはどう記録されたか 下 昭和二十年八月七日以後 (朝日文庫)

ヒロシマはどう記録されたか 下 昭和二十年八月七日以後 (朝日文庫)


・筆者プロフィール

蒼崎青太郎(Seitaro Aozaki)

1993年12月25日、福岡県福岡市生まれ。カルチャーマガジン『蒼青堂』主宰。大学卒業後の2016年4月に新卒で鉄鋼系商社に入社。営業として鉄工所やゼネコンへ鋼材や建築資材を売り歩くも、少し捻くれた性格からか会社員として働くことに限界を感じ、2019年6月末で退職。そして現在に至る。

趣味はアニメ鑑賞、映画鑑賞、読書、模型作りなど。二次元美少女と日本軍の飛行機が好き。オタク。

名前の蒼崎青太郎は本名ではなく、TYPE-MOONのノベルゲーム『魔法使いの夜』に登場する蒼崎青子が由来。
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