蒼青堂

斜め45度のカルチャーマガジン

【戦時中の労働環境】航空機の増産を妨げた労働問題について

f:id:taro1563:20190802222135j:plain

文章:蒼崎青太郎(twitter:@seitaro_aozaki)

2019年も早いもので8月を迎えました。梅雨も明け、全国的に猛暑日が続いています。

8月という月は、様々なメディアで先の戦争(大東亜戦争・太平洋戦争)についての報道が良くも悪くも盛んになります。所謂”8月ジャーナリズム”と呼ばれる現象です。

そこで本サイトでも先の戦争に関する記事を少し上げてみようと思います。何かを考えるきっかけになれば幸いです。
今回は戦時中の飛行機工場の労働環境について取り上げてみようと思います。

戦時中といえば国民全員が、国家総動員体制の下でお国の為に一生懸命働いているイメージが浮かびますが、当時の労働環境や労働者の働きぶりは実際はどうだったのか。

実はそのイメージとは大きくかけ離れています。

航空機の増産が急がれた大東亜戦争

f:id:taro1563:20190802214908j:plain

1941年12月8日より始まった大東亜戦争(太平洋戦争)は空の戦いでした。

戦闘を有利に導くためには制空権を確保しなければならず、そのためには何よりも強力な航空兵力が必要でした。

しかしミッドウェー海戦、ガダルカナル島の戦い以降日本軍は陸海軍ともに航空兵力の大半をソロモン、ニューギニア方面で消耗しており、航空機の増産と搭乗員の養成が急がれました。

海軍は予科練志願者の中から、搭乗員をわずか半年程度の短期養成をしたりと、少しでも早く搭乗員を確保しようとしました。

ですが航空機の増産が思うように進みません。そこにはある大きな問題があったのです。

深刻な工場労働者欠勤問題

f:id:taro1563:20190802214059j:plain

航空機の増産を妨げた要因には工作機械の性能や資源不足などの問題がありましたが、それ以上に深刻な問題がありました。

それは工場労働者の欠勤です。国家総動員体制下にも関わらず工場労働者の欠勤が相次いでいたのです。

例えば中島飛行機の場合、1943年夏頃の工場労働者の欠勤率は、2週間以上の欠勤者数は6%~12%にものぼっていたようです。

日本全体での徴用工欠勤率は、戦争初期の1942年の段階で平均14%。これが「一億火の玉」「欲しがりません勝つまでは」でお馴染みの国家総動員体制に於ける実情でした。

ではなぜ欠勤率が高かったのか。

その最大の理由は、工場労働者に対する待遇の悪さだったと言われています。労賃の少なさが待遇に対する不満の筆頭で、これを原因とするストライキも起きています。徴用されることを嫌い、わざと怠ける人も多かったといいます。徴用によって、賃金や待遇は前職よりも低下することが多かったのです。

統制経済の影響により戦争に不要とされた業種では転業者も少なくなく、こうした人たちの賃金は一般労働者の3分の1程度でしかなかったと言われています。

また、工場内の差別待遇が深刻でした。

これは戦前の日本社会全体がそうであったようですが、工場で働く工員と管理担当の社員とでは、工員が請負の日給制なのに対し、社員は月給制と全く異なっていたのです。

このような状況は改められることもなく、1945年の夏には欠勤率は60%に至っていたといいます。もはや半数以上が欠勤している状況です。

そしてついに日本は戦争に敗れました。

現代にも通じる欠勤問題

f:id:taro1563:20190802215314j:plain

戦時中の労働環境は、現代日本の労働環境にも通じると思います。

残業代未払い、海外からの教育実習生への不当な扱い。ブラック企業、ブラックバイトの跋扈・・・

今年で日本が戦争に敗れて74年が経ちますが、現代日本は当時から何も変わっていないように思えるのは気のせいでしょうか。

一刻も早く、劣悪な労働環境が日本から消え去る事を願うばかりです。


・筆者プロフィール

蒼崎青太郎(Seitaro Aozaki)

1993年12月25日、福岡県福岡市生まれ。カルチャーマガジン『蒼青堂』主宰。大学卒業後の2016年4月に新卒で鉄鋼系商社に入社。営業として鉄工所やゼネコンへ鋼材や建築資材を売り歩くも、少し捻くれた性格からか会社員として働くことに限界を感じ、2019年6月末で退職。そして現在に至る。
趣味はアニメ鑑賞、映画鑑賞、読書、模型作りなど。二次元美少女と日本軍の飛行機が好き。オタク。
名前の蒼崎青太郎は本名ではなく、TYPE-MOONのノベルゲーム『魔法使いの夜』に登場する蒼崎青子が由来。
ご連絡は下記メール、又はTwitterのDMまでお願い致します。
seitaro.aozaki@gmail.com