蒼青堂

斜め45度のカルチャーマガジン

【新海誠監督最新作】『天気の子』 感想/自由と希望に満ち溢れた新たな境地へ

f:id:taro1563:20190717233844j:plain

文章:蒼崎青太郎(twitter:@seitaro_aozaki)

2016 年に公開され、最終的に250億円の興行成績を残した『君の名は。』から3年。新海誠監督の最新作『天気の子』の感想です。

※ネタバレを含みます。

作品紹介


映画『天気の子』スペシャル予報

「君の名は。」が歴史的な大ヒットを記録した新海誠監督が、天候の調和が狂っていく時代に、運命に翻弄されながらも自らの生き方を選択しようとする少年少女の姿を描いた長編アニメーション。離島から家出し、東京にやって来た高校生の帆高。生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく手に入れたのは、怪しげなオカルト雑誌のライターの仕事だった。そんな彼の今後を示唆するかのように、連日雨が振り続ける。ある日、帆高は都会の片隅で陽菜という少女に出会う。ある事情から小学生の弟と2人きりで暮らす彼女には、「祈る」ことで空を晴れにできる不思議な能力があり……。

これまでの新海誠の総決算

f:id:taro1563:20190719204015j:plain

2019年7月19日。日本からまた大傑作アニメーションが誕生したと思います。非常に嬉しい思いでいっぱいです。

新海監督の描く風景の描写は、相変わらず美しい。『天気の子』ではそこに監督がこれまでも拘ってきた雨の描写がふんだんに入り、それが降り注いで水たまりだったり、水滴になったりする。そしてその水が魚のような生き物に変化していく・・・
この水の表現があまりにも美しく、見ていて溜息さえ出てくる。

そして雲や空が変幻していき、大都会にそびえ立つ高層ビル群の窓に太陽光が反射しながらRADWIMPSの爽快感を感じさせる音楽が流れる・・・
これが壮大なMVを見ているような感覚に陥いっていき、大きな快感を感じさせてくれます。(壮大なMVという点では「君の名は。」も同じですね)繰り返し見たくなるような中毒性がある。

『天気の子』を見て他の人たちがどう感じるか分かりませんが、新海監督の作家性というものを『君の名は。』以上に僕は強く感じました。

本作は監督自身が語っているように、紛れもなく”ドエンタメ作品”であることは間違いない上に、『君の名は。』以前の『言の葉の庭』や『秒速5センチメートル』のようにドストレートに新海監督を感じる訳ではない。

これはファンからも評判があまりよくない前前々作の『星を追う子ども』のファンタジー要素の良いところと、『雲のむこう、約束の場所』のセカイ系的な要素を連れてきて、そこに新海監督の本来のエキスのようなものと、『君の名は。』で得た新たな感覚を丁度よく混ぜた感じと言えばいいでしょうか。これらが絶妙に融合して、しっかりと新海監督のエキスのようなものを感じながらも、ドエンタメ作品になっている。これは新海監督はまた新たな境地にたどり着いたのではないかと思います。

世間一般で認知されている『君の名は。』の新海誠という像を自ら破壊し、かなり自分勝手に好きなものを作っている(かなり良い意味で)。

かといって瀧くんや三葉が出てきたり、瀧くんのおばあちゃんが結構な重要人物だったりと遊び心を入れ、見にきている観客を飽きさせない。

実に素晴らしいこれまでになかった大傑作ドエンタメ作品です。

現代日本から生まれたことに意味があり感動する

f:id:taro1563:20190719204927j:plain

ヒロインの陽菜が廃ビルの屋上にあった鳥居をくぐることにより、祈ることで雨を降り止ませ、周辺の天気を快晴にさせる特殊な能力のようなものを身につける。しかし鳥居をくぐることによって陽菜は人柱となってしまった。人柱としての役割を果たさなければ東京の空は晴れることはなく、雨が降り続けることになってしまう。そして人柱となった陽菜は自己を犠牲にして天に消えていく・・・

何だかヤマタノオロチの龍神伝承をモチーフにしてそうですね。

陽菜が人柱となってしまったことに喪失感を感じる主人公の帆高。帆高は陽菜を救う為に奔走するわけですが、陽菜を助けること=雨がひたすら降り続ける世界になってしまうわけです。

しかしここに新海監督の作家性を強く感じます。新海監督のこれまでの作品を見てもわかるように、恋が成就するかなんてのはどうでもよく、恋愛模様の過程と主人公とヒロインの距離感が重要なわけです。
好きな女の子を救う為であれば、たとえ社会と対立し世界を犠牲にしてでも懸命に奔走する。大人に対して無力な子供ながらも走る。とにかく自分が信じるものに対して走り続ける。

この帆高の行動は間違いなく反感を覚える人は出てくるだろうし、賛否が分かれることは間違いありません(これは監督自身も語っています)。なんせ自分勝手な行動で世界が変わってしまうわけですから。しかしアニメーションであればそれを自由に表現出来る。
この帆高の陽菜を助けに行く行動は、見ていて希望を抱かせてくれました。

ただこれはみんなが救われる『君の名は。』の結末とは真逆を描いています。新海監督はもしかするとずっと『天気の子』のような結末を描きたかったのかもしれない。もう自分勝手に作ったものしかこれからは見せてあげないよという意志の表れのようにも感じました。

僕は『天気の子』を見ている最中に何度も泣きました。それは物語に感動したからとか以上に、こんなアニメ作品が現代の日本という選択の余地が最初からない、何だか生き苦しい国から生まれたことに対してと、新海監督の魂の叫びのようなものに対してです。見ている最中に「クソみたいな世界だけど、これまで生きてきて本当に良かった」と何度も何度も感じたわけです。なんて自由で希望を抱けるような作品が生まれてきたんだと。

僕はこれから死ぬまでの人生で、この『天気の子』を何回見るんだろう。公開初日からそんなことを考えています。
きっと劇場にも何度も足を運ぶと思います。

少なくとも僕がここ数年で見てきたアニメ作品の中ではぶっちぎりで1番です。明日から希望を持って生きていけそうです。

P.S 陽菜ちゃんが凄く可愛かったです。


・筆者プロフィール

蒼崎青太郎(Seitaro Aozaki)

1993年12月25日、福岡県福岡市生まれ。カルチャーマガジン『蒼青堂』主宰。大学卒業後の2016年4月に新卒で鉄鋼系商社に入社。営業として鉄工所やゼネコンへ鋼材や建築資材を売り歩くも、少し捻くれた性格からか会社員として働くことに限界を感じ、2019年6月末で退職。そして現在に至る。

趣味はアニメ鑑賞、映画鑑賞、読書、模型作りなど。二次元美少女と日本軍の飛行機が好き。オタク。
名前の蒼崎青太郎は本名ではなく、TYPE-MOONのノベルゲーム『魔法使いの夜』に登場する蒼崎青子が由来。
ご連絡は下記メール、又はTwitterのDMまでお願い致します。
seitaro.aozaki@gmail.com