蒼青堂

斜め45度のカルチャーマガジン

「三島由紀夫は左翼」というあるネトウヨの珍説について

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文章:蒼崎青太郎(twitter:@seitaro_aozaki)

2019年6月9日の夜。小雨と蒸し熱さから梅雨入りが近いことを感じさせる。僕はiPhoneを片手に、twitterのタイムラインを眺めていた。
そこには共通の趣味で繋がっているアニメ好きな方のアニメに関するツイートや、前職の関係で話が合う建築業界の方々のツイート、リアルな友人の何でもないツイートなどが表示されていた。そんな中に目を疑うようなツイートが飛び込んできた。

それはいわゆるネット右翼と思われる人物のツイートなのだが、内容は以下の通りだ。

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筆者のスクリーンショットより

日本が世界に誇れる国なってほしいと願ってやまない(彼のtwitterのプロフィールより)ネトウヨらしき人物が、右翼の代表的人物である三島由紀夫は”左翼”であるという主旨のツイートしていたのだ。

幻冬舎との件で何かと話題になっていた津原泰水氏の『ヒッキーヒッキーシェイク』という小説と、百田尚樹氏の『日本国紀』という歴史書(歴史書と言っていいのかはここでは言及しない)のどちらにより価値があるかみたいなことをやり取りしている最中でのツイートのようだ。しかし僕にとってはそんなことよりも、ネトウヨが三島を左翼だと認識していることにもの凄い衝撃を受けたのである・・・

これは右派の知的劣化・知的怠惰である

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1970年11月25日、市ヶ谷駐屯地で演説する三島。こんな格好をした左翼がいたのだろうか...

三島由紀夫といえば戦後日本を代表する作家であり、代表的な作品として『仮面の告白』『潮騒』『金閣寺』などがある。三島の遺した数多くの作品は、昭和、平成を経て令和の時代となった現在も読み継がれている。

しかし作家である一方で自衛隊への体験入隊などを経て、民兵組織「楯の会」を結成。1970年11月25日、当時の自衛隊市ヶ谷駐屯地で憲法改正のために自衛隊に決起を呼びかける演説の後に割腹自殺をした。

この事件は「三島事件」とも「楯の会事件」とも呼ばれ、政治に関心のない人たちの間でも有名な事件である。三島は新右翼の源流ともなった。

そんな世間一般にも”右翼と認識されている”三島のことを、日本を憂いているはずのネット右翼が”三島は左翼”と認識しているのだ。僕はこのネット右翼のツイートを目にした後、あまりにもの衝撃でしばらくこのことが頭から離れなかった。保守的な考えに共鳴している立場としても、何か絶望的な距離感のようなものを感じた。

これは明らかな右派の知的劣化、知的怠惰だ。所詮はネットの保守系動画番組などをはじめとする保守論壇のネットでの言論活動の内容を、twitterなどのSNSにトレースするだけ。”○○先生がこう言っているから”という意外は自分の考えは何もないのが今のネット右翼なのだ。

僕はネットの保守系動画番組による言論活動を、必ずしも悪いと思っているわけではない。僕自身もそこから多くのことを学ばせてもらった。しかしこのネット動画をはじめとした保守派のネット上での言論活動というのが、保守派の明らかな知的劣化、知的怠惰を招いているとしか思えない。今の保守界隈の間では三島に関して言及されることはないのだろうか。いつまで経っても中国や韓国を呪詛し、左派、リベラルと称される方々をパヨクや反日勢力と罵っていることが大半なのだろうか。それ以外に何もないのだろうか。無知、無教養な人間がそれに影響された結果がこれだ。

他のネット右翼が三島を左翼だと認識しているかどうかは分からない。しかしこの三島は左翼だと認識してしまっているネット右翼は、右派、保守派の知的劣化、知的怠惰を端的に表している。日本の現状を憂う前に自分の無知、無教養を憂うべきだ。このまま自分の無知、無教養さを垂れ流していては、日本が世界に誇れる国になることは遠のいていくだろう。

P.S.三島由紀夫については若松孝二監督の映画『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』がオススメです。

筆者プロフィール

蒼崎青太郎(Seitaro Aozaki)

1993年12月25日、福岡県福岡市生まれ。カルチャーマガジン『蒼青堂』主宰。大学卒業後の2016年4月に新卒で鉄鋼系商社に入社。営業として鉄工所やゼネコンへ鋼材や建築資材を売り歩くも、少し捻くれた性格からか会社員として働くことに限界を感じ、2019年6月末で退職。そして現在に至る。

趣味はアニメ鑑賞、映画鑑賞、読書、模型作りなど。二次元美少女と日本軍の飛行機が好き。オタク。

名前の蒼崎青太郎は本名ではなく、TYPE-MOONのノベルゲーム『魔法使いの夜』に登場する蒼崎青子が由来。

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